しじみは育つ環境によっておいしくなる!
「しじみ○○個分の○○」やしじみエキスが注目を浴びているしじみですが、もともとしじみは健康に良いとして、味噌汁の具や佃煮などで古くから日本の食卓に馴染みのある食材でした。
そんな身近にあるしじみはどのような環境で育っているのでしょうか。
しじみの種類
日本に生息するしじみは大きく3種類あって、淡水域に生息するマシジミとセタシジミ、海水と淡水が混じり合う汽水域に生息するヤマトシジミがあります。
一部の地方を除いて私たちが目にしているのは、ほとんどがヤマトシジミです。
川が海に流れ込む河口付近に潮干狩りに行った経験のある方は多いかと思います。
そこで獲れるしじみがヤマトシジミです。
淡水域に生息するマシジミ
マシジミは山間部や平野部の河川や水路、ため池など淡水域に生息しています。
殻長は3センチ前後になり、成長脈がくっきりしているのが特徴です。
食用の他に肝臓の薬として利用されていましたが、獲れる量が少なく、ヤマトシジミと違って味が落ちるので基本的に流通はしていません。
もし、川の上流などでしじみを見つけたらマシジミと思って間違いありません。
琵琶湖に生息するセタシジミ
琵琶湖と周辺の河川の淡水域のみに生息する固有種です。
かつて琵琶湖から流れ出る瀬田川に多く生息していたのでこの名がついたといわれています。
琵琶湖およびその周辺の瀬田川、淀川、宇治川などの京都を流れる川に生息していました。
昔はたくさん獲れていて、全国にも出まわっていたのですが、次第にその数が減少してきて、2018年現在では京都や琵琶湖周辺のみで出回るにすぎなくなってしまいました。
見た目ではヤマトシジミとの区別はつきにくいのですが、殻が丸みをおびているのが特徴です。
汽水域に生息するヤマトシジミ
マシジミやセタシジミが黒または茶色なのに対して、ヤマトシジミは褐色でつやがあり、成長すると成長脈がはっきりとしてきます。
汽水域に生息しており1年中獲れるのですが、産卵期の6月前後や青森、北海道産のしじみは寒い時期の「寒しじみ」となる1月~2月が旬で、身が詰まっていて味も良いとされています。
日本全国に生息し、市場に出回っているのはほとんどがヤマトシジミです。
そのためしじみといえばヤマトシジミのことを指します。
ここでも以降はヤマトシジミのことをしじみと表記します。
しじみの育つ環境
しじみが生息する汽水域は海水域と淡水域の合流点なので、海水よりも塩分濃度が低いです。
具体的には、海水の塩分濃度が3.5%以上のところがほとんどなのに対して、汽水域の塩分濃度は0.5%~3.2%程度です。
ただし、潮の満ち引きや降雨による川の増水などにより、同じ場所でも塩分濃度は変化します。
このように塩分濃度が変化する汽水域に生息するしじみは、環境の変化が激しい条件から内臓が発達しており、グルタミン酸などのうまみ成分を多く体内に蓄積します。
しじみがおいしいのはこのような環境によるところが多いのです。
しじみは保護されている!
しじみはかつてたくさん獲れていましたが、環境の悪化などにより激減しています。
しじみは普段、砂の中にもぐって生きています。
日本の高度成長期に工業廃水や生活排水が流れ込んだことで、砂地にヘドロが堆積し、水質自体も悪化したため、しじみは生息できなくなってしまいました。
その後、排水の垂れ流しをやめ、しじみの生育に影響を与える水底の泥を取り除いたりして、環境の改善を進めています。
また、漁に関しても各漁協や行政などで一定の大きさに満たないしじみを獲ることを禁止する漁法を制定するなどしています。
今後、しじみが高級食材にならないように、しじみの保護を積極的に進めていただきたいものです。